ベンチプレスの失敗した時のナンバーカードについて
ベンチプレスはパワーリフティング3種目の中でも最も失敗の判定となる根拠が多い種目です。
試合を見ていて番号が表示されているが一体何だろう?と、思われることでしょう。
失敗の判定には審判は一つだけ失敗理由を数字で表示しなければなりません。
ベンチプレスにおける失敗の数字は下記の通りです。
1番(赤) バーベルのシャフトがベルトにタッチする
2番(青) 挙上中にバーベルが一度下がる
3番(黄) 1番、2番以外の失敗全て(その他の失敗)
1番(赤)バーベルのシャフトがベルトにタッチする、胸にバーがつかない
これはよほどベルトを高い位置に巻き、バーベルのシャフトをかなり意図的に腹側に降ろさない限り起こりえません。
実際には起こらなくなった失敗判定です。
少し前は腹ベンチと表現され、バーベルのシャフトがみぞおちより下で身体にタッチすると失敗とされていました。
しかしながら、実際のタッチする場所ではなくバーベルのシャフトが斜めの起動を描いただけで腹ベンチと誤審する審判がいたため、判定があいまいでした。
そのため、腹ベンチは廃止されバーベルのシャフトがベルトにタッチしてしまった場合に失敗となりました。
もう一つ1番の反則項目があります。
バーベルが胸に着かない
フルギアのベンチシャツは反発力が強いので非常にキツいシャツとそのシャツに対して重くない重量で試技をした時に起こります。
いくらキツいシャツでもほとんどの選手はバーベルを無理にでも胸につけにいきます。そのため本当にまれで数年に一度くらいの頻度でしか起きません。
2番(青)挙上中にバーベルが一度下がる
バーベルのシャフトが挙上中に一旦下がってしまった場合は失敗です。ただし、多少の傾きは失敗となりません。
また、挙げ終わった時に肘が伸び切っていない場合も2番に該当します。
実はこの2番は皆様が考えている以上に判定が割れます。
主審は頭側から、副審は左右のおおよそ斜め45度の位置から試技を見ています。
審判の見る位置によって傾いているだけなのか下がってしまったのか見え方が変わってしまうためです。
バーベルが挙上中にラックに触れてしまった場合はどうなるのか?
バーベルが挙上中にラックに触れてしまった場合で失敗と判定されるのは下記の通りです。
バーベルが一旦、下がってしまった。(基本ルール通りです)
触れたラックを壁のように利用して挙上した。(これはその時の見え方によります)
バーベルがラックに触れてしまっても即座に失敗とはなりませんので諦めずに挙げきったほうが良いです。
3番(黄)その他の失敗について
1番、2番以外の全ての失敗が該当しますのでかなり多く、複雑です。個別に紹介します。
身体の一部が試技中に浮いてしまうまたは動いてしまう
お尻が浮いたら失敗というルールをご存知の方は多いです。
しかしながら、浮いたら失敗になってしまうのはお尻だけではありません。
ベンチプレスの姿勢は頭、肩、お尻が全てベンチ台の上に、足の裏全体が地面の上に着いている状態を審判が確認した上でスタートのコールがかかります。
この接地しなければならない面が浮いたり、動きますと失敗と判定されます。
従いまして、頭、お尻、つま先、かかとが挙上中に浮いてしまった場合は失敗です。
多くの方が気付いていないのがかかとの浮きです。
挙上中に足が動いてしまったり、バーベルを握っている手が動いてしまっても失敗です。
接地面の浮きや移動に関する失敗はブリッジをしてベンチプレスを行う選手に発生します。
お尻の浮きに関しては判定が割れます
2番の時と同様、見る位置によって見え方が変わるためお尻の浮きは判定が割れます。
(余談ですが、怪我持ちの選手やテクニックのある選手はこの見え方の違いを利用し、あえて片方のお尻を浮かせて試技をすることがあります。)
また、脚で地面を蹴る選手は挙上時にお尻が収縮します。この収縮は失敗ではないのですが、誤審される審判がいらっしゃいます。
一時期、お尻の面積の50%以上がベンチ台に着かなければならないという解釈がIPFから出されたことがありましたが現在ではこの解釈は形骸化してしまい、よほど骨盤が立った極端なブリッジをしない限りお尻はついていると判定されます。
合図無視
ベンチプレスの試技はバーイズローデッドの声で入場します。
ベンチ台の上で仰向けになり、頭、背中、お尻、足の裏全体が着き、肘を伸ばしきった状態で胸の上でバーベルを順手に握り、構えます。この時、脚がベンチ台やベンチ台の支柱にふれてはいけません。
この状態を3人の審判が確認した上でスタートのコールがかかり、試技に入ります。
スタートがかかる前にバーベルを降ろし始めると失敗です。
バーベルを胸の上で静止させると審判からプレスのコールがかかるのでそれを聞いてからバーベルを挙上します。
プレスの見切り発車による失敗はベテランの選手でもたまにやってしまいます。
バーベルを挙上し終わり、肘が伸び切り、静止させますとラックのコールがかかり、バーベルをラックに戻します。
ラックのコール前にラックに戻すと失敗です。このミスは初心者に多いです。
スタート、プレス、ラック
この3種のコールを全て聞いていから次の動作を行うようにしてください。
リプレイスについて
まれにスタートではなく、リプレイスというコールとともにバーベルをラックに置き直しさせられます。
ちゃんと接地面が全て着いていて肘も伸びているはずはのに何故だ?
と、思われるかもしれません。
人差し指が81cmラインよりも外側でバーベルを握っていますとリプレイスがかかる事があります。
81cmラインとは下記の画像で紫の丸で囲んでいるローレット(シャフトに施されたギザギザの滑り止め)が無い箇所です。2つの紫の丸の間の長さが81cmです。
拡大しますと
このラインが人差し指で完全に隠れる握り方がルール上の最大幅の握り方です。
81cmラインが見える握り方は反則です。
ワイドグリップのベンチプレスを行う選手は人差し指が81cmを超えて握っていないか普段から気をつけましょう。
さて、この81cmラインの握りですが、ほとんどの場合で主審しか見えません。副審が二人とも手を降ろしていたとしても主審が81cmラインより人差し指が外側を握っていると判断した場合はリプレイス(ラックに戻せ)がかかり、バーベルが戻されます。
81cmラインが人差し指で隠れるよう握り直すまでスタートはかかりません。
バーイズローデッドから1分が経過するとタイムオーバーによる失敗試技となります。
プレス後にバーベルが沈む
プレスのコールの後にバーベルが一旦、身体に沈み込む挙動が見られますと失敗です。
普段からバウンドするようなベンチプレスを行う方はこのテクニックは試合では使えませんのでご注意下さい。
バーベルがセーフティラックに触れてしまう
これは初めて試合に出る方がやってしまうミスです。
セーフティラックは高い方が安全ですが、バーベルを降ろした時に触れてしまわない高さをウォーミングアップの台で確認してからセーフティラックの高さの申請を行って下さい。
なお、ラック及びセーフティラックの高さはバーイズローデッドがかかるまでは変更が可能です。ご自身に合っていない高さを申請していたことに気付いたらすぐにパソコンを打っている役員に修正の旨を申請しましょう。
ラックにバーベルを戻すのを怠った
ラックにバーベルを戻す時は補助がつきますが自力でも戻して下さい。
ここで落としたり姿勢が崩れますと3番の失敗判定がつきます。
ベンチプレスの複雑なルールには歴史あり
日本人のベンチプレス選手団は金メダルを量産する常勝軍団です。
特に、2000年代に日本人のテクニックを封印して勝たせないためにルールや解釈を二転三転させたため、非常に複雑になっています。海外の選手が日本人のテクニックを積極的に取り入れるようになってからはルールの変更は落ち着きを見せています。
テクニックを使わないベタ寝のベンチプレスの方は失敗判定にほとんど引っかかることはありません。
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